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保険金のおかげです!

社長の死亡直後にM&Aを仲介したときのお話しです。こういう事例も時々あるので、社長の死亡=会社の倒産と考えずに関係者(株主、遺族、役員、保険会社)は諦めずにM&Aの可能性を探っていただきたいです。

(売り手A社の概要)
大阪の段ボールメーカー
年商2億円、経常損失1,000万円
社員10名、債務超過500万円
借入金4,000万円
株主構成(社長70%(先月死亡)、専務10%、元役員20%(なんとその翌月死亡))

通常、こういう財務内容で社長が亡くなった場合は、業績回復が見込めないため会社を解散するケースが多いと思います。そして、場合によっては、社長の自宅に設定されている根抵当権が実行されて遺族は自宅を失うケースも考えられます。
亡社長夫人から相談を受けた際、A社も解散する可能性があったのですが、幸い、A社に亡社長の死亡保険金が1億円入ってくることになりました。これで借入金が全額返済できたので、M&Aという選択肢が出てきました。

この案件では、先月社長が病死し、その株式を奥さんが相続したものの会社のことは全く分からないので、ナンバー2の専務に会社経営を任さざるを得ない状況でした。ただ、奥さんは、亡き社長が入院中に専務が業績を悪化させたことに強い不信感を持っており、専務とまともなコミュニケーションが取れない状態でした。そこで、私の出番です。
私がこの専務に会って、今後のA社についてお話を聞いたところ、専務は次のような考えであることが分かりました。
「自分はもう65歳で、社長の死亡を期に自分も退職しようと考えたが、社員のことを考えると退職もできない。しばらくは自分が社長になって、このA社をなんとかしないといけない。」

なんと、この専務は早くA社をなんとかしないといけないという思いから、B社とC社への売却話を大株主である奥さんの承諾なしに進めていたのです。
こういう行動が奥さんの不信感を高める原因となっていたのですが、専務がA社のことを思って行動した結果であることを奥さんにご理解いただき、買い手候補のB社とのM&A交渉を進めることにしました。
このB社は、奥さんもよく知っている会社でした。B社は、なんとA社の隣にある同業者であり、A社の本社建物の家主であり、A社がやっている仕事の後行程をしているため相乗効果が期待できるというM&Aの相手としては、これ以上ない良い条件を整えていました。

この案件で注目すべきは、次の2点です。
・社長が亡くなって、A社の業績が急激に悪くなる前にM&A交渉をスタートできたこと
・保険金がA社に入ったため、M&A可能な財務内容になったこと

もし、会社の業績がいい状態で社長が急死した場合は、相続人に精神的な苦痛の他に多額の相続税が発生します。
その大変な状態を回避する有効な方法がM&Aなのです。

未上場会社の株式は、資産価値があっても換金化しにくいものです。親族に後継者がいない場合は、M&Aにより株式を現金化し、相続税納税資金の確保や老後の生活資金の確保が可能です。

この案件のように社長死亡直後のM&Aは、色々な条件が整わない限り難しいので、できれば社長が元気なうちにM&Aされることをお勧めします。

生命保険会社や保険代理店の方は、「いざというときに保険金で助かった」と言われることがあると思いますが、社長死亡直後のM&Aについてもアドバイスをお願いしたいです。


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