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ドタキャンOK?

M&Aは、ドラマチックでダイナミックなものです。
時には、感動的な場面もあり、私も関係者も泣きそうになる場面が何度もありました。
最終契約が締結されるまでは、売り手買い手とも真剣勝負で、私も真剣勝負です。
交渉の過程で腹が立ったり、凹んだりする場面があるのですが、M&A後は、「譲っていただいてありがとう。買っていただいてありがとう。」といういいムードになるように心掛けています。

仲介会社が一番痛手を被るのは、最終契約直前でのドタキャンです。もちろん、売り手も精神的なダメージを受けるのでできるだけドタキャンがないようにM&Aの交渉を進めています。
通常、売り手と買い手が交渉をスタートして最終契約締結まで、3ヶ月ほど掛かるのですが、最終段階の買収監査で思わぬことが発見されたとか買い手や売り手の思いがけない事情でドタキャンになることがあります。
そうなると仲介会社も今まで散々やってきたことが水の泡になります。M&Aプレーヤーは、何度かこういう経験をして精神的にもタフになり、ドタキャンのリスクを回避するための工夫をしたり、仲介センスを磨いていていくのです。
私が、今まで経験した大きなドタキャンは3回あるのですが、ご紹介したいと思います。

(ドタキャンその1)・・・そのことを誰も知らなかった!
大阪で調剤薬局3店舗を売却するという案件だったのですが、3店舗のうち2店舗が将来、計画道路の新設による立ち退きと病院の移転に伴う別の場所への移動が必要という買い手からすると非常に難しい条件があったのですが、双方にとってリスクの少ない契約内容にこぎ着け、いよいよ買収監査という最終段階になりました。ここで思わぬことが見つかりました。薬局の売掛債権として保険未収入金が2億円ほどあったのですが、このうち約5,000万円が回収不能であることが発見されました。「まさか!」という事態です。
保険未収入金は、相手が国であるため全額回収できるというのが、一般常識です。
このケースでは、5年以上前の保険未収入金で保険請求の要件を満たしていないため、貸倒処理しておくべきものが帳簿に載っていたのです。要するに国への請求漏れです。
これは、売り手の役員も顧問会計事務所も回収不能に気づいておらず、後で売り手の社内で大問題になりました。
本来であれば、譲渡金額を減額すべきですが、売り手が減額を拒んだため、ドタキャンになり、私と買い手が損害を受けてしまいました。
こういうのを業界では、「お化け」というのですが、最後まで何が出てくるのか分からないのがM&Aなのです。

(ドタキャンその2)・・・まさか買い手の兄が!
京都の医療関係の案件(売上10億、経常利益8000万円)の買い手として地元で有名な建設業(その他にビジネスホテル、コンビニ等のビジネスを展開)の社長との交渉を進めてきて、基本合意契約を締結し、いよいよ最終契約締結を1ヶ月後に控えた時期のことでした。
買い手の社長の兄が経営する会社が、突然倒産してしまったのです。本来、この買い手の社長とは関係ないのですが、銀行から兄の面倒をみてくれという強い要請がありM&Aを断念することになりました。
この時、私も売り手(68歳の女性)も精神的苦痛を伴いました。その後、別の大病院グループとうまくM&Aできたので、結局、前の買い手との話が壊れて良かったのですが、成約するまでは、過去最長の3年近く掛かった苦労の多い案件でした。

(ドタキャンその3)・・・まさか鶴の一声で!
東京の水産物案件で、宮城の上場会社のM&Aチームが興味あるとのことで、交渉をスタートしました。
譲渡希望金額を当初から伝えており、あまり減額できない点は何度も説明していました。
買い手のM&Aチームは、役員会で説明するために色々な資料を要求し、売り手の社長との面談の要求にも応じて3回の面談をさせていただきました。
交渉から3ヶ月ほど経過し、かなり細かな条項も入れた最終契約書並みの基本合意契約書について交渉している段階で、買い手の社長が急に譲渡希望金額の半額ほどの買収希望金額を主張してきました。
こんなことを売り手が了解するはずはなく、当然交渉中止です。
M&A仲介仲間から、以前この買い手に振り回されたという話を聞いたことがありますが、私も同じように振り回されてしまいました。こういうことを平気でする会社は、着手金を支払わない共通点があります。私は、着手金を支払わない相手とは基本的に交渉しませんが、相手の理由(社内ルール)を受け入れ、着手金なしでスタートした案件は、結局うまくいきません。
この買い手のM&A担当者とは、今までM&Aの情報交換を20回ほどしてきましたが、当然、この買い手は弊社に出入り禁止にしました。
この案件は、3ヶ月後に別のとても相性のいい買い手と無事M&Aできたので、売り手社長には感謝されましたが、ドタキャンの直後は、「今度の買い手は最後に売買金額を値切ってくることはないでしょうね。」と何度も釘を刺されました(^_^;)

これら以外にも私が経験したり聞いたりした事例で、次のような理由でドタキャンになった案件がありました。
①売り手の社長がM&A直前で交通事故に遭った。
②売り手が脱税で新聞に出た。
③売り手が飲食業で、食中毒を起こし、新聞に出た。
④買い手の社長が信仰している神のお告げがあり、やめてしまった。
⑤買い手の決算発表により株価が急落し、M&Aどころではなくなってしまった。

このように最終契約締結までは、何が起こってもおかしくないのがM&Aであり、筋書きのないドラマといえます。ドタキャンの原因も売り手・買い手双方あるのですが、これらを初期の段階で解決し、無駄のないスピーディなM&A仲介ができるよう日々精進したいと思っております。


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