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下請会社同士のM&A

M&Aに至るまでのハードルが高く、今まであまり手掛けてこなかった下請会社同士のM&Aのお話しです。
買い手は、多くの下請企業(中小零細企業)が集まる東大阪市にあり、売り手は、隣接する八尾市にありました。

(売り手の概要)
業  種:金属製品プレス業
売  上:約5億円
経常利益:7,000万円(今期過去最高)
従 業 員:約30名
業  種:大手電機メーカー(S社)の2次下請け
譲渡理由:後継者難

(買い手の概要)
業  種:金属製品プレス業
売  上:約5億円
経常利益:3,000万円
従 業 員:約30名
業  種:大手電機メーカー(M社)の下請け
買収理由:生き残りのため

現在、東大阪市には、約7,000社のメーカーがあり、このうち10年後には、なんと60%がなくなるといわれています。その主な原因の1つが、赤字が続くことによる廃業または倒産で、もう1つが後継者難です。
 今回成約した売り手の社長は、64歳で、娘さんが2人いましたが、そのご主人は、音楽家と大手商社のサラリーマンで、この会社を継ぐ意志も能力もありませんでした。
 そもそもこの社長が、M&Aを決意したきっかけは、入社十数年の幹部社員の次の一言でした。
「社長は、もう60歳を超えていますし、この会社は将来、誰が社長をするんですか?」
この言葉にびっくりした社長は、今まで会社の将来に不安を持っていたものの従業員も同じことを考えていることが分かり、改めて会社の将来について真剣に考えないといけないと思うようになりました。
 そこで、この幹部社員に次期社長になってくれるよう打診をしましたが断られたので、外部で社長を探そうと大手人材紹介会社に打診しました。20人近くと面接したものの、いい人物に巡り会うことができず、落ち込んでいた時に、顧問税理士が、「M&Aという選択肢もありますよ」というアドバイスをしてくれたことがきっかけとなり、M&Aがスタートすることになりました。
 顧問税理士がM&Aというアドバイスをするまでは、社長には会社を譲渡する(譲渡できる)という発想は全くありませんでした。
 買い手は、なんとこの顧問税理士の顧客で、売り手と同業で会社規模もほぼ同じという状態でした。
 まずは顧問税理士が、買い手にM&Aを打診して、興味を持ち始めた段階で、私にM&A仲介の依頼があり、本格的に交渉がスタートしました。

 買い手の社長(45歳)は、2代目で、異業種交流会等にも積極的に参加し、色々な団体の役員も引き受けて、営業も得意なタイプでした。
この社長は、当初、①買収するなら、その核となっている金型部門のみを買収したい。②同業を買収するよりも、異業種(例えば、プラスチックの射出成型業)を買収する方が、メリットがあるという考えでした。
 私は当初、売り手は、利益をたくさん出しているものの、売上の95%を1社に依存する下請けの状態でしたので、正直M&Aは難しいかもしれないという判断をしていました。ただし、次のような好条件だったので、最終的に買い手は、充分メリットがあると判断しました。
①今期は、過去最高の業績であり、しばらくこの状態が続くと思われる。
②売り手の社長が、譲渡希望価額を1.2億円まで下げてくれた。
③売り手の持つノウハウは、大阪でもトップクラスであり、下請けながら、現在の得意先との取引が切れる可能性が少ない。

結局、5ヶ月の交渉期間を経てM&A成約となりましたが、契約式には、売り手の社長夫人にも参加していただき、この夫人から買い手の社長に趣味である手作りの貼り絵がプレゼントされ、2人の娘さんも大変喜んでいるとのことでした。

買い手の社長は、父親(亡き創業社長)の時代には、売上10億円までいったこともあり、今回のM&Aでグループの売上が10億円になったことを大変喜んでくれました。さらに過去の栄光を取り戻すべく、近い将来、両社が、同時に工業団地へ移転し、効率の良い工場を作りたいとのことでした。
買い手の社長は強面で、車も大きなトヨタ・ランドクルーザーでしたが、自分のことを「狼の皮を被った羊」と言っていました(^o^)

この案件は、なかなか出口が見いだせない下請会社同士のM&Aでしたが、このような中小企業はたくさんあります。
今後も同様の事例が増えるようM&Aのメリットを宣伝していきたいと思います(*^_^*)


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