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買収監査について

この1年間で仲良くしている銀行から買収監査の依頼が4件ありました。
うち3件はM&A成約、1件は買収金額が高すぎる(相場の2倍)ということと売り手の社長が反社会的勢力(闇金で逮捕歴あり)ということが判明したため、当然破談。

買収監査は、基本合意契約後、最終契約前に買い手が行うもので、これにより売り手の内容を徹底的に調査します。
調査の目的は、主に次の2点です。
○M&A後のリスクを明確にする
○M&A後に両社が統合しやすくするための売り手の概要把握

買収監査によってリスクが発見された場合、買い手が取る選択肢は大きく分けて次の3つに分類されます。
(その1)
大きすぎるリスクが発見された場合は、買収を止めるという判断が正解です。例えば、PCBのよる土壌汚染が深刻な場合や重要な法令違反(例えば、病院の場合は診療報酬の不正請求)をしており営業ができなくなる可能性が高いような場合です。このような大きすぎるリスクを金額で表すと買収金額以上のマイナスになることが多く、買収する経済的合理性がないということになります。

(その2)
次にどうしても買収をしたいが大きなリスクが発見された場合は、買収金額を大きく下げるという判断をすることになります。例えば、多額の回収不能債権や不良在庫が判明した場合です。なお、発見されたリスクが小さい場合は、買収金額の変更をしないことも多いです。

(その3)
最後に実際に買収を実行してみないとどうなるか分からないリスクもあります。
M&Aで考えられるリスクのうち大きなものは、得意先が切れることと会社のキーマンが辞めてしまうことですが、これらは、買収前には通常分からないことです。よって、もし買収後にこれらのことが発生した場合は損害賠償の対象にするという条項を最終契約書に入れておく必要があります。

では、今まで私が監査人またはM&A仲介者として携わった買収監査でのエピソードをご紹介させていただきます。
(事例1)
ある調剤薬局の買収監査で、保険未収入金(一般企業でいう売掛金です)について約5,000万円の回収不能が見つかりました。最初は請求相手が国なので回収不能はないと思っていたのですが、念のため毎月の請求額と回収額の推移を調べてみるとこの約5,000万円が滞留していることが分かりました。その原因は、過去の請求漏れと請求ミスが積み重なったもので、売り手の社長もこの事実を買収監査で指摘されるまで知りませんでした。

(事例2)
ある金型メーカーの案件で、知り合いの女性会計士のご主人(会計士)が買収監査の担当になったことがあり、監査報告書に「本社工場の土地は市街化調整区域のため評価額を固定資産税評価額にすべき」と書かれたことがありました。この本社工場は住宅地の中に工場が点在するような立地で、10年ほど前に工場を拡張する際、現在の土地建物を購入したものでした。その時の土地の購入価格は約1.2億円でしたが、譲渡価額算定上の私の評価は約8,000万円としていました。それに対し固定資産税評価額は約3,000万とかなり低い金額でした。この会計士は単純に(市街化調整区域=建物が建築できない)という判断で評価額を安くしたのですが、評価の大原則は、一般に売買される時価はいくらか?ということですので、相場観がとても重要になります。市街化調整区域内の建物は増改築することにより存続させることが可能な場合が多いのですが、この会計士は不動産鑑定の常識を全く分かっていませんでした。
まずいことに買い手はその監査報告書を口実に買収金額を5,000万円値下げするよう要求してきました。本来であれば、時価について再鑑定をすべきですが売り手の社長の体調が悪かったこともあり、最終的に買収金額を4,000万円下げるということで、売り手に了解していただきました。
この売り手社長と私は、とても相性が良かったこともあり頻繁に連絡を取り合っていたのですが、買収監査前の3日間は連絡が取れなくなりました。後でその理由を聞いたところ、買収監査の4日前に軽い脳梗塞で倒れ、入院していたとのことでした。本来であれば、体が大事なので買収監査日を延期すべきですが、この社長は「今後自分の体がどうなるか分からないので、死んでも良いから買収監査は予定通りの日程できっちりやってもらいたかった。そのために病院に無理を言って、買収監査の日だけ退院させてもらった。」とのことでした。この社長は自分の命より会社の将来ことが心配だったのです。

(事例3)
売上約8億円の食品メーカーの場合、月次試算表が作成されておらず、なんと法人税の申告は個人の確定申告のように1年分の領収書をまとめて税理士に渡して計算していました。
買収監査では、買収時点にできるだけ近い月の試算表を元に資産と負債の確定を行いますが、この会社の場合は、現預金や借入金以外の科目は、資料が作成されていないので前期の決算を元に行わざるを得ませんでした。
結局、この買収監査ではいろいろ問題点が出てきて、問題を指摘した項目は、30項目ほどになりました。
中でも重要な法令違反として、関係会社(休眠会社)で取った製造許可を元に製造を行っていた点と食品に使っていた地下水の汚染が心配されるにもかかわらず調査が最低限の年1回しか行われていなかった点が大きなリスクであることが分かりました。
排水については、検査をパスするために検査の日だけ基準をクリアするようにしていました。
また、従業員退職金規程では中小企業退職金共済に積み立てられた額のみ退職金として支払うとなっていたのですが、実際は、ほとんどの従業員が中小企業退職金共済に加入しておらず、実際の退職時には、社長の気分次第で退職金を決定していました。また、社長夫人は非常に発言権のある人で「会社が儲かっていれば退職金を支払うし、儲かっていなければ退職金を支払わない。社員もそのことは分かっている」というコメントをされたのですが、従業員退職金規程がある以上、この考えは通用しません。
結局、社員全員について社長ならいくら退職金を支払うのかをインタビューで聞き出し、
簿外債務として計上しました。

(事例4)
従業員ゼロ、社長と社長夫人だけのメーカー案件では、私の自宅から徒歩7分ほどのところに自宅兼本社がありました。
社長は、製造兼営業を一人でこなし、社長夫人は経理担当でした。
買収監査の際、どういう帳簿類があるかを把握するために「まずは前期の総勘定元帳を見せてください。」と聞いたところ、この社長夫人に「総勘定元帳って何ですか?」と言われてしまいました(@_@)

(事例5)
関東の沖縄料理案件では、地方から従業員を募集しており、毎月3万円~5万円の家賃負担をしていましたが、ある女性従業員一人にだけ20万円を支払っていました。
これはどう考えてもおかしいので、社長に「これは愛人ですね」と聞いたところ、あっさり認めてくれました。まじめな買い手の場合、これがM&A破談の原因になることがありますが、おおらかな買い手だったので、笑って済ませることができました!(^^)!

(事例6)
あるラーメン店の調査では、過去最低のいい加減な内容でした。
まず、出張イベントでは大半の売上金を社長が横領して売上除外にしていました。よって、あるべき利益率が算出できません。
店舗の1日の売上合計を確認するためにレジを通した合計額が分かるジャーナルを依頼したところ、店長が廃棄したとのことでした。その店長は現地調査の前日にクビになっていました。
不動産賃貸借契約書も紛失しており、欲しい資料がほとんどありませんでした。
厨房の中に入りましたが床が油でべちょべちょで、冷蔵庫の中身の保管状況もよくありません。お店の横の駐車場にも壊れた洗濯機等のガラクタが置いてあり、センスの悪さがにじみ出ていました。
お客さんがいなくなった時間帯に店員が客席でタバコを吸い始めたのには閉口してしまいました。
こういう売り手は信用できないと何度か買い手の社長にお話ししたのですが、買い手の社長は、「こういういい加減なところがたくさんあるのは分かったので、その部分が良くなったらもっと良いラーメン店になると思う。」と逆に前向きになってしまいました(>_<) 以上のように買収監査では、色々なことが発見され最終契約書に影響したり、場合によってはM&Aがキャンセルになる可能性もあるので、M&A仲介者は結構ドキドキしています。 買収監査は、(事例2)のように買収金額を値切るために行うのではありません。買収後に想定外の問題が発生した場合、買い手と売り手の双方が嫌な思いをすることになるので、そうならないように将来発生しそうな問題点について早めに解決しておくことが目的です。 監査人は想像力を働かせて色々なリスクを発見することが重要です。ボ~っとしていたらリスクは発見できません。この想像力と売り手へのインタビュー能力が監査人の能力といってもいいので、想像力が弱かったり、経営者感覚に欠ける会計士は買収監査には不向きです。 買収監査は本来、売り手と買い手の双方にとってメリットがあるものなのです。


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